【23.8.10】坪井由実さんーー基準値の3倍超のPFAS汚染検出   健康への影響も 汚染源の解明を!

坪井 由実さん

つぼい・よしみさん

1950年愛知県豊山町生まれ。
「豊山町民の生活と健康を守る会」共同代表。現役時代、元大学教員(専門は教育行政学)。現在は、「開かれた学校づくり」全国連絡会企画運営委員長。東海地区「こども条例」ネットワークの幹事など、「学習環境調査に基づく対話のある学校づくり」を探究。

PFASとは「永遠の化学物質」
 
 全国各地でPFAS(ピーファス・5000種類に及ぶ有機フッ素化合物の総称)汚染が明らかになり、健康被害をもたらす原因物質として注目されています。
 PFASのなかでも代表的なのは、PFOSやPFOAです。撥水性と撥油性をあわせもち、これまで、様々な表面処理の用途に使われてきました。主な用途は、半導体、電子基板などの工業製品、泡消火薬剤、雨具やカーペットなどの繊維、焦げ付かないフライパンなどに使用されています。日常使用する、撥水剤、スキーのワックス、ファンデーション、口紅などの化粧品にも使われていました。
 PFOAはストックホルム条約で、製造、使用、輸出入を原則禁止する物質にあげられており、国内では、法律にもとづき2021年10月以後、原則として製造・輸入・使用が禁止されています。一方で、長期的に環境、人体に残留するため、「永遠の化学物質」といわれ、製造・使用が制限されても、依然被害は拡散しています。日本の規制は始まったばかりです。
 人体への影響として、PFASの血中濃度が高い人たちは、一般の人たちに比べてがん(腎臓がん)、潰瘍大腸炎、甲状腺疾患、高コレステロールなどの発症や低出生体重、免疫力の低下、ワクチンの有効性の低減などを引き起こしやすいことが、欧米の研究で続々と発表されています。
 PFASの一部は半減期(半分が便、尿などにより体外に排出される期間)が3年から5年といわれており長期に私たちの体にとどまり続けます。PFAS汚染はいのちの源ともいえる水、魚類や農作物などの食べ物、大気、土壌の汚染であり、未来の子どもたちに引き継ぐわけにはいきません。

住民が独自調査

 一昨年の夏「いつもだったら夏冷たくて、冬は暖かい水道水が、いつまで経っても冷たくならない。おかしい」と野崎八十治さん(元同町共産党議・本会共同代表)が企業団に電話しました。豊山配水場を管理する北名古屋水道事業団の調査で浄水(水道水)でPFOS、PFOAが水質管理の暫定目標50ng/ℓを超える150ng/ℓが検出され、2021年3月17日に豊山配水場の地下水のくみ上げを中止していたことがわかりました。
 21年12月に企業団に、国の暫定目標の3倍も汚染された水道水を飲み続けてきた住民の健康被害について問いただしました。「毒性に関しての科学的見地はまだ十分でない。地下水に混入した時期、原因はわからない」との回答で、原因究明調査については「地下水の所管は愛知県。原因究明はできない」と。
 私たちはこの問題を「会報」で取り上げ全戸配布しました。水道水を飲み続けてきた住民に衝撃がひろがり、学習会も継続的におこないました。
 豊山町長・議長あて署名活動を行い、愛知県環境局などへも働かけました。愛知県は、汚染は以前からあった可能性があると認めながらも、国の指導待ちで県民の健康不安に寄り添い住民の健康を守る姿勢や体制は全くありませんでした。

血液検査の結果 高い値
 
 行政に任せていてはだめだと、PFAS汚染水問題を取り組んでいる沖縄県や東京多摩地区の住民と連絡をとりあうなかで、原田浩二京大准教授に血液検査の分析をお願いすることができました。
 今年6月17日、54名の住民の採血を、愛知民医連の医師、看護師などの協力で行いました。
 そして、今回の血液検査の結果、54人の血漿中のPFAS濃度は、東京多摩地域の国分寺市、立川市についで、また沖縄県北谷町よりも高いことが明らかになりました。

戦後、米軍が接収

 豊山町は人口約1万6千人の小さな町です。面積の三分の一が基地、空港、三菱重工小牧南工場で占められています。
 1944年、小牧飛行場はわずか一週間で地主から土地を接収し、水田を埋め立て建設。戦後は1952年の朝鮮戦争のさなかに米軍管理下にあった小牧飛行場に三菱重工が小牧南工場を建設。1958年、小牧飛行場は米軍から返還され、翌年には航空自衛隊第三航空団が置かれました。小牧飛行場が名古屋空港になったのは1960年です。
 今回の有機フッ素化合物汚染の問題と戦中に土地を収容され飛行場が建設された歴史を切り離して考えることができません。

汚染源は

 「公害健康被害補償法」は予防原則にたち、迅速な被害者の保護と健康の確保を求めています。また、予防原則からすれば、汚染源の究明が第一です。まだ、定かではありませんが、航空自衛隊小牧基地、三菱重工小牧南工場、県営名古屋空港などの影響があるのではないか。
 1994年の県営名古屋空港での中華航空機事故で、4千リットルの泡消火剤を使用。基地のなかを横切っている農業用水等を汚染しました。
 航空自衛隊小牧基地は、泡消火剤による消火訓練が毎年実施され、航空自衛隊小牧基地の地下水槽水のPFOS・PFOAの合算値は110万ng/ℓという途方もない汚染度です(防衛省発表)。
 三菱重工小牧南工場は、現在、最新鋭のステルス戦闘機F35の組み立てと整備拠点で、自衛隊機だけでなく在日米軍ほか、グアム、韓国、豪州に配備されている米軍機の整備拠点になりつつあります。
 
愛知県の地下水汚染

 愛知県の河川は、調査によるとほぼ全県的に河川も地下水も汚染されています。汚染は広域化し、悪化しています。早急に全県規模での地下水と浄水の実態調査が必要です。
 大村県政は、南工場の整備に百億円もの巨額な県費をつぎ込み、周辺の国有地を買い上げて三菱重工に払い下げるなど至れり尽くせりの支援をしています。住民の命を脅かしている地下水汚染の実態を調べるのに欠かせないPFAS測定器(6千万円程度)は後回しにされています。

住民の不安に寄り添った医療相談体制を

 汚染源の究明とともに、住民の不安に寄り添った行政と医療相談体制を確立することが課題です。
 愛知県や豊山町は、「健康被害の報告はまだないし、研究の進展を見守る」などと悠長に構えています。こういう姿勢を改めさせ、企業の協力も得て、汚染源を究明していきたい。住民の不安を思い、寄り添う姿勢のない行政は、私たちの人格権を踏みにじっています。 公害裁判で明らかなように、個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、私たち一人ひとりの人格に本質的なものです。
 まず、愛知民医連の全面的協力を得て、不安な住民に寄り添った医療相談体制を築いていきたい。
 

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