【23.09.10】濵嶌将周さん(弁護士)—–いま、ここでSTOPしなければ! 一致点でつながって運動をひろげよう

国家が個人監視する社会を許さない

 
濵嶌 将周 さん

弁護士 
1971年生まれ。
名古屋市出身。緑オリーブ法律事務所。秘密法と共謀罪に反対する愛知の会代表。

マイナンバーとマイナンバーカード

 マイナンバーとマイナンバーカードは厳密に言うと違うものです。マイナンバーとは識別の手段。この人が誰かを区別するための手段です。同姓同名であったり、名字や名前が変わったり、あるいは私の名前のように漢字が複数あり間違われたり、そういう問題点をなくすために12桁の識別番号を作った、というのが建前です。他方、マイナンバーカードというのは認証の手段です。マイナンバーを使おうとしている人がその人かどうかを確認する手段。だから、濵嶌将周本人であることを確認できれば、別にマイナンバーカードである必要は全くない。運転免許証などでも十分です。だからこそ、マイナンバーカードは任意取得、強制しないとしてきたわけです。

利用を無制限に拡大させる

 政府はこれまで、マイナンバーの利用は、税・社会保障・防災の3分野に限る、としてきました。これは、マイナンバーを導入するにあたって、個人情報の漏えいや、国家によるプライバシー侵害の懸念に配慮したからです。仮に利用分野をさらに広げるとすれば、国会の審議を経て法律改正をしないといけません。今回のマイナンバー法改正で4分野目がつくられましたが、マイナンバーそのものの利用拡大には法的制限があるのです。
しかし、利用分野を制限し、基本的には行政の中だけで収まる番号のはずのマイナンバーとは違って、民間も含めて無制限に利用拡大ができてしまうのがマイナンバーカードです。実は、マイナンバーカードのICチップの中には、12桁のマイナンバーとは別の発行番号が入っています。この番号はマイナンバーではないので、マイナンバーカードは3分野以外の何にでも、誰にでも使って構わない。だから、運転免許証、学習記録、コンビニ決済などいろんな話が出てくるのです。

企業利益のための個人情報

 そうなると、マイナンバーカードには、個人の健康に関する情報、教育情報、運転免許などあらゆる情報が紐づいてきます。コンビニ決済に使えるとなれば、お買い物情報が全部くっついてきます。紐づけされた情報は、企業にとってはおいしい情報ですよね。どこで何を買うのかがわかってくれば、何が好きで、どう宣伝すれば買ってくれるか分析できます。どんどん先回りして情報を提供することができます。自分で選択しているつもりでも、先回りの情報によって選ばされている、こんな社会になってしまいます。企業のビジネスチャンスを広げるための膨大な個人情報の収集と分析。ここにマイナンバーカード普及を強引に進める企業と政府のひとつの狙いがあると思います。

国家が個人の情報を収集・管理する社会

 国家による市民のデジタル監視が最も進んでいるのは中国と言われています。山東省のある地域では、「いい子・わるい子ポイント」みたいなものがあり、このポイントによって社会保障や公共機関などの利用に制限をかけることが行われています。
 市民の生活全般や医療行為、教育、犯罪履歴にいたるまで、マイナンバーカードのようなもので国家が市民のすべてを収集・管理・分析できるとしたら、知らず知らずのうちに私たちは自身の行動を国家の意に沿うように抑制していくでしょう。また、少なくとも、国家が収集した膨大な個人情報をもとに、例えば社会保障費を「効率的に」削減することは容易にできてしまいます。
 私も関わっている「マイナンバー違憲訴訟」で、今年3月9日に言い渡された最高裁判決はプライバシー権について、「個人に関する情報をみだりに第三者に開示または公表されない自由」と言いました。30年前だったらそれでよかったでしょう。しかし、今や問題は個人情報の開示・公表にとどまらない。私たちの知らないところで国家や企業が個人情報を収集・管理し、それを分析・利用する。この一連の流れが、私たちの基本的人権を侵害しつつある。この危険性がいま問われています。

一致点で運動を広げよう

 7月28日、医労連や保険医協会の皆さんと、私の所属する秘密法と共謀罪に反対する愛知の会を含む市民団体とで「マイナ保険証一本化反対」実行委員会を立ち上げました。マイナンバーへの考え方については、いろんなスタンスがあると思います。しかし、今、岸田政権が進めている保険証のマイナンバーカードへの一本化には多くの人が不安と批判を強めています。現行保険証を来秋廃止と言いますが、命に関わるようなトラブルの発生、マイナカードの所持や管理が難しい人はどうなるのか、また、行政窓口の混乱、地域の開業医への負担など、問題点が山積しています。これらの問題点を共有し、一致できる点でつながって運動を広げることが重要です。
 ここまで進んできてしまったマイナンバーやマイナンバーカードですが、「さすがにこれは許せない」という声を集めてさらに運動を広げたいです。ここで一旦STOPをかけなければいけません。国家による市民監視が当たり前になる社会に歯止めをかけることにつながります。

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