お互いの違いを認めて、ともに生きる人に優しい社会を

川瀬 まゆみ さん
 
人業劇団ひらき座 代表。名古屋造形短期大学卒業。
ひらき座の他に人形劇ちんどんなどで、保育園や幼稚園などのイベントにも出演。

★予告 ひらき座自主公演★
2024年11月2日(土)3日(日)4日(月)
  名古屋市千種文化小劇場(ちくさ座)
 ~最新情報はひらき座のHPを見てね!

人業劇団ひらき座HP→hirakiza.com

人形劇ちんどん – 子どもたちに大きな夢を (chindon.biz)

他者を元気にすることは 自分を元気にすること

 元々は故・増原彬陽さんに誘われて「元気になるための演劇講座」の受講生になったのがはじまりです。 ここで「人を元気にすることは自分が元気になること」だと教わりました。自分の可能性を発見した時こそ、人は元気になれる。演劇のための演劇ではなくて、元気になるための演劇を教えてもらいました。
 講座が終わる1983年4月に「感動を手にしたいと思ったら自ら行動しないとより多くの感動は得られない!」の思いで、私と卒業生の女性3人で劇団を立ち上げました。人の業(わざ)を生かし心を開いて元気になる「人業(ひとわざ)劇団ひらき座」です。

ひらき座、40年の活動

 ひらき座は昨年40年を迎えました。年1回の自主公演をずっと続けています。
 40年もやっていると、劇団の中で結婚したり子どもができたり、生まれる前から知ってる子もいます。メンバーには車椅子の人がいたり、愛護手帳を持っていたり、在日コリアン、フィリピン、ブラジルの人がいた時もあります。学校に行けない子もいます。劇団員は、いつでも、誰でも歓迎なんです!
 去年の40周年記念公演では5歳から88歳までが一緒に舞台に立ちました。ひらき座では、違いがあるもの同士が一緒に芝居をつくる中で、自分自身を知って、心を開き、表現する中で元気になる。違いも含めてお互いを認め合うような、育ち合うような仲間づくりをしてきました。

朝鮮高校の無償化運動

 毎月2回、第2第4金曜日の18時から1時間、栄で朝鮮高校の無償化を訴えて街頭宣伝をしています。今年で7年目です。少しでも関心を持ってほしいと思い、歌ったり、楽器を演奏したり、にぎやかにやっています。実際、ふと立ち止まって話を聞いてくれる人、対話になる人もいます。朝鮮学校がお金がない中で校舎もボロボロ。家庭の持ち出しも多く、経済的にも精神的にも大変な思いをして通っています。なぜこんなにも偏見と差別にさらされているのか。街頭でも本当に酷い、心無い言葉をぶつけてくる人がいます。信じられない気持ちです。
 街頭宣伝をやるようになったのは、在日コリアンの友人ができたことがきっかけです。ひらき座で彼らと一緒にお芝居を作って公演しました。お客さんから「知らなかった」と感想をいただきました。ともに学びあい、感じたことが、今につながっていますし、考えるきっかけになっていることを願っています。

「感動」して元気になる

 なにかを見て、知って「心が動く体験」が「感動」です。なにかすごいものを見て「へぇー、すごい」は「感心」。大規模で派手な演出の舞台・映画などでは「感心」だけで終わってしまうことがありますよね。私たちのつくる芝居では、見ている人が「心が動く=感動」を通じて元気になってほしいと思っています。それは必ずしも、楽しい、嬉しいだけではないかもしれない。残酷な現実を知ったとき、悔しいこと、悲しいことかもしれない。でも、お芝居なら心にすっと入ってくるんですよね。日常とは違う別世界でキラキラしたものに「感心」するだけの芝居では、何かを変えようとは思いません。芝居を見終わって、「私も行動したい」「自分も調べてみたい」「少しだけ人に優しくしようかな」など、小さくてもいいんです。そういう変化があることが「感動」です。お客さんと一緒にそんな時間と空間を共有できるのも芝居の魅力ですね。

子ども時代にこそ演劇を

 ひらき座や人形劇ちんどんなど、保育園や幼稚園で子どもたちに生の芝居を見てもらうことも大事にしています。最近はこども食堂でもやっています。
 いつも一緒に遊んでいる友達と、同じ空間で同じものをみて「感動」することはテレビやゲームでは体験できません。この体験が「共感」を生みだします。日本の教育現場では、もっとこういう体験を子どもたちにさせてほしいです。

「人業」は「生きる業」

 表現するおもしろさを知ると「自分にもこんなことができるんだ」「変われるんだ」と感じて人は元気になります。表現を通じて他者を元気にすることが、私自身の元気の源です。
 「平和で差別のない社会にしたい」の思いはずっとあります。平和でなければ何も始まりません。朝鮮学校無償化の運動にもつながる思いです。日本では「おかしい」と思っても「おかしい」と言えないような苦しさがあります。でも、黙ってなにもしなければ、物事は悪くなる一方です。ひらき座での体験や仲間づくりから、一歩広げて、「お互いの違いを認めてともに生きる社会をつくろう」と訴えるようになりました。
 「人業」の「業」は文化芸術の「業」という意味もありますが、もうひとつ「生きる業」という意味もあるんです。「生きる業」として人と人とが結びつき、そんな人の思いが力になれば戦争だって止めることができるかもしれない!と希望を持ってこれからも表現し続けたいです。でも、昔から、堅苦しいのは苦手。楽しく、やさしく、心を動かすような表現で、これからも伝えていきたいです。

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