収容所を密室にしてはいけない!市民の監視の目が必要

西山 誠子 (にしやま せいこ)さん
1944年生まれ 65歳から名古屋入管面会所ボランティア活動をはじめ現在に至る。2020年3月30日にメーテレでドキュメント「面会報告」が放送。「生きとし生けるもの」出版。
9月24日、入管に収容されている非正規滞在者の支援を15年つづけておられる西山誠子さんの自宅を訪ね、お話を伺いました。2020年の大きな手術のあとも、毎週面会に出かけ支援を続けています。 【聞き手・写真 近田美保子】
面会のきっかけ
「閉じ込められた彼らをほっとけない!」との思いから、私は、2010年5月から「フレンズ」という団体をつくり、名古屋入管被収容者面会活動をしています。
十数年前になりますが、親しくしていたフィリピンの女性から誘われて入管に面会に行きました。初めて入管(法務省 出入国在留管理庁)を知りました。戦争中ならともかく、いまの日本に収容所があるなんてびっくりしました。
やっぱり、一回会うとどうしてるか気になり、体調の悪かった人はどうしているか、家族にも教えてあげたい。弁護士に尋ねた返事や頼まれた買い物、それぞれに届けなければならない。安否確認のために来週は行かなければと思うと絶対休めません。
面会を始めてからの数年は、早く伝えたいと思い、週に3・4回行っていましたが、今は毎週1回の面会をしています。入管収容は、帰国するまでに無期限に収容が可能であり、密室で人権侵害が起こりやすいです。 「暴行事件」「面会時間の平等化」などたくさんの要望や申し入れを行っています。人権を守るために監視する支援者が必要です。
入管収容施設に収容されている人々の現実
外国人が国内に3か月以上(観光旅行は上限3か月迄)滞在すると、滞在許可証が必要になります。有効期限が切れている人は滞在できません。入管に収容されている人々の多くは、交通違反等で警察につかまったり、突然、街頭で職務質問を受けたり、働いている工場に入管が外国人のチェックに来た等々でビザが切れていることが発覚します。刑法違反があれば警察から、裁判、懲役へ、その後は入管へ移送されます。犯罪がなければ、数日から十数日後には入管に収容されます。
入管では、身柄を拘束して違反審査をおこない、その後、在留特別許可がでるか、国外追放です。
退去強制令が出る人が圧倒的に多く、9割以上の人が収容所から即帰国を言い渡たされています。
収容されるとそこから出る手段は強制送還か、仮放免(監理措置)許可を得るしかないのです。
帰国を望まない人の理由は、さまざまですが、何十年も日本で暮らしていて生活基盤のない母国に帰るのが困難、日本で家族ができた、日本生まれの子どもがいる、難民で帰国すると命が危険などです。
当面は送還を免れて、ふたたび日本社会に出てきたとしても、身分は他の外国人と同じではありません。在留カードが与えられない、住民登録ができない、就労が禁止されるのです。
仮放免になった人は、もう、次を心配してるんですよ。出頭日の1週間ぐらい前になると、それまで元気だったけれど、いつ収容されるかもしれないとすごく心配して、体調を壊す、そういう状況ですね。
非正規滞在の日本的歴史 ブローカーの介入
1980年初頭頃からのバブル経済期の到来で、国内での労働力が足りなくなり、ブローカーたちが海外の労働力に目をつけました。
一番最初に目をつけたのはアジアです。世界で一番貧しい国、バングラディッシュ、スリランカ、パキスタンです。今は中国、フィリピン、ネパール、イラン、トルコなどアフリカや東南アジア諸国から来ています。
彼らが来日した当時は、日本で働くことができるビザがありませんでした。ブローカーたちは、「旅行ビザで入国し、働いていればビザが出る」などだまし文句で誘い、オーバーステイ(非正規滞在)となる外国人が増えたのです。発展途上国の若者たちは、「自分の将来を開きたい」「病気の家族のために、幼い弟妹を学校に行かせたい」と希望を持って日本に働きに来ます。
一人一人、大切な人生があるのです。しかし、飛行機代など100万円前後の借金をして日本にきても、働くところもない。働くところがあるとしても、労働条件が過酷です。今もその現実は変わっていません。
政府はバブル期に労働力を確保したかったので当時、入管は違法状態を黙認していました。
厚生労働省の2024年10月の調査では、外国人労働者は250万人。東京に次いで製造業の多い愛知が23万人と上位にはいっています。
「不法滞在者ゼロプラン」
ウイシュマさんの死亡事件後も、入管は収容を続けています。
2025年5月23日に入管庁は「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を発表しました。強制送還を2027年までの3年間で2023年度の件数の2倍にするといっています。実際に強制的な送還がおこなわれています。
ほんの一例ですが、今年の9月5日まで仮放免だったブラジル人が更新にきたら、即収容されて飛行機に乗せられて送還されたのです。空港まで13人の警備員が付き添い、飛行機には5人の警備員が乗ってブラジルまで同行、こうした強制送還は件数が増えています。
移住外国人とともに生きる日本に
参政党の「日本人ファースト」って、外国人によって治安が悪くなるとかいっていますが、これは日本人の分断につながると思います。
もう私なんかは非国民ですから、排斥される人になるのじゃあないですか。日本人ファーストとは、政府に都合のいい人を擁護することで、それ以外は排斥するということです。危機感を感じています。
外国人に対して差別的発言がありますが、しかし、今の日本社会は、外国人労働者によって支えられています。今は日本社会は外国人なしでは成り立ちません。 在留資格のない移民や難民は、私たちの社会の一員です。
在留資格のない移民をさして、「不法滞在者」などという表現がよくつかわれますが、1975年の国連総会で「全ての移住労働者の人権を確保するための方策」が決議されました。海外では、「無登録、あるいは非正規の」移住労働という表現が当たり前です。「不法」とするのは不正確です。
私たちは、「非正規滞在者の正規化への提言」を出しています。
これからの日本は外国人とともに生きていく。日本人が自覚しないといけない。
彼らは、お客さんではありません。隣人であり、恋人であり家族であるかもしれません。
「いっしょにくらそうよ」と言える日本になってほしいです。
皆さんにお願いです。ぜひ、こうした現状を知ってください。声をかけてください。お話に出かけていきます。大学や高校でお話をさせていただいています。 移住外国人とともに、生きる日本社会にしていきましょう。

西山誠子著
風媒社
1,980円(税込)
2025年7月30日初版