
緒方 靖夫さん
日本共産党副委員長
党国際委員会責任者
アメリカ、大企業中心の政治を変える革新懇の運動で共同の戦線を!
極右の台頭は民主主義を圧迫し、圧縮するもの
これからの日本を考える上で、ヨーロッパでいま起こっていることをしっかりつかむことは、とても大事です。
極右の台頭は一言でいうと民主主義を圧迫、圧縮し、民主勢力を亡き者にしようとするものです。ですから、このたたかいは、平和・民主・革新の日本をめざす革新懇の目標にぴったりのたたかいです。
自民党タカ派、高市政権は、維新と連立し、しかも極右の参政党の協力を得るという政権となりました。右寄りの政策を矢継ぎ早にめざし、ハンドルは右にしか回らず、アクセルが二つついていて、ブレーキがありません。参政党が提案する「スパイ防止法」にも全面的に賛同しています。
アメリカでの大きな変化―民主的社会主義市長の誕生
参政党の動きは、ポピュリズムで多くの人から受けを狙うという点で、アメリカ・トランプ政権と共通しています。排外主義、排除と分断で国民を先導し、「日本人ファースト」のスローガンも、トランプ大統領から学んだとしています。
こうしたトランプ政権に対して、いま、アメリカで大変なことが起こっています。ニューヨークで、民主的社会主義を掲げたマムダニ市長が、シアトルでは同じくケイティ・ウイルソン市長が誕生。私たちにとっては、大きな励ましです。
日本とヨーロッパの極右の5つの共通点
ヨーロッパはファシズム、ナチスの歴史を持っています。60年代、70年代の社会福祉が盛んだった頃には、極右勢力はなかったんです。新自由主義がのさばり、格差と貧困の拡大で人々の不安、不満を煽り、極右が生まれました。 極右と一口に言っても、状況はそれぞれ違います。
ヨーロッパの極右勢力は、フランス中心のPFE(欧州の愛国者)、ドイツが中心のESN(主権国家の欧州)、イタリア・ポーランド中心のECR(欧州保守改革)の3つに分かれています。
ヨーロッパと日本の極右の共通点は次の5点です。
①新自由主義政策の申し子である②民主主義の社会的規範、言論空間を狭める
③移民排斥、福祉排外主義
(福祉を自国民に限定)
④トランプ政権との親和性、連携⑤SNSを駆使して活動、格差と貧困を広げる政策で、人々が孤独感を感じたり希望を失ったりするところに極右の受け入れを招いてしまいます。極右の特徴は、激しい体制批判と既成政党批判です。有権者と怒りをともにする姿勢を示すことで政治不信を煽り、「政治を変えるのは自分たちだけ」と宣伝します。政策の一貫性とか土台はありません。
移民や高齢者、障がい者を標的に
移民だけではなく、高齢者や障がい者を排斥し、わかりやすい標的にします。
移民を排斥するために、移民が受けている社会保障を削減したり、移民を排斥する理屈をつくります。一番大事なのは、生活が苦しいのは、移民のせいや外国人のせいではなく、今の政治に原因があるということです。
極右の政策は受けを狙うため、SNSを駆使して、自分たちの思想を振りまくります。政策は無責任なものなので、キャッチーなコピーを流すのが特徴です。
SNSは、極右の専売特許ではありません。われわれがきちんと使って、活用し宣伝していく、これがいかに大事かという事を教訓にしたいと思います。
正面からたたかい対話で要求をとらえる
ヨーロッパでは、アメリカが圧倒的軍事力と影響力でNATOを主導しています。また、排外主義の対等や歴史的修正主義がヨーロッパで広がる中、左翼が勢力を維持していくことは大変なことです。
2024年6月のヨーロッパ議会選挙では、左翼勢力が3議席増やし、46議席となりました。軍事費増大反対、軍事同盟反対、さらには、NATO解体を掲げる政党が前進し議席を増やすことは大変なことですが、そういう奮闘におおいに励まされます。
教訓として学びたいと思うことは、「正面からたたかう」ということです。
極右に投票する有権者の信条、気持ちをよく汲んで、しっかりと対話していくことです。極右に投票する人は、極右政党に染まっている人ではない、と見る必要があります。対話で、有権者の要求をしっかりとらえることが大事です。
ヨーロッパでは、住宅問題が一番大きな課題です。家を持つ感覚がないため、家賃の凍結値下げが最大の要求です。
ニューヨークに誕生したマグダニ市長。公約にしたのは、家賃の凍結、公営バスの無料化、保育の無償化でした。世論調査でも、7割以上が家賃凍結を支持していました。
極右支持者とも最後まで対話すること
また、極右の支持者という方々とも、話をし最後まで話を聞く、これが大事です。閉塞感と不満を感じているから、自分の話を最後まで聞いてもらったことがない、そういう経験がヨーロッパでも、日本でも多いと思います。最後まで話を聞いてもらった、というだけで、関係がフラットなものになります。
極右支持者にレッテルを張るのではなく、尊重して、話を最後まで粘り強く聞くということ。レッテルを張ってしまうと、対話が成り立たなくなります。
ベルギーでは、極右が盛んであった30年前には、0・2%の勢力であった左翼ベルギー労働党が、今は12%の得票率です。時間はかかりますが、戸別訪問で一人一人対話し、気分と要求をとらえます。選挙運動に制限がないんです。日本では、選挙活動への規制が厳しく、このような「べからず選挙」をしているのは、日本だけです。
変革の勇気を結集して連帯してたたかう
私たちは、平等、尊重、平和的な共存を大事に、連帯を広げていきます。極右勢力は、これと真逆で、人種差別、排外主義、エリート主義など分断を持ち込んでいます。
価値観と世界観のたたかいです。私たちは、戦争反対、平和で公正な国際政治を打ち出して、たたかいをすすめます。世界を変革していくための人々の勇気を結集して、ともに連帯してたたかうことがとても大事だと思います。
日本の極右勢力の特質
日本の極右勢力は、アメリカに迎合し、トランプ政権との連携を誇示しています。いま、日本の世論でも、6割がおかしいと声を上げ、ヨーロッパでは、7~8割がトランプ政権はとんでもないと声を上げています。
こうした中で、日本の極右勢力が連携を打ち出すことは、潜在的な致命傷になるアキレス腱を持っているとみる必要があります。
また、参政党の憲法草案を見ても明らかですが、基本的に戦前に回帰するという特異性があります。自民党が衰退するもとで、極右が出現し、極右の政策を取り入れ、挽回しようとすることで、ますます戦前回帰がすすむという関係にあると思います。
自民党政治反対のたたかいこそ本道
極右・排外主義の台頭は、歴代の自民党政治のひどさから生まれています。おおもとの、悪い自民党政治を治す、正すことが一番です。
極右とのたたかいをすすめる上でも、そこに焦点をおいて争うということです。
革新懇が、アメリカ依存と大企業中心の政治、日本の政治が抱える二つの病とのたたかいをすすめることが、一番の特効薬で、その正面からのたたかいが課題になります。
国民のみなさんと協力し、共同の戦線を広げていくために、大いに運動をすすめていきましょう。
※革新・愛知の会は、12月6日、第46回総会を開催しました。総会記念として「高市政権のもとで極右・排外主義とどうたたかうのかー欧州左翼党のたたかいから学ぶー」をテーマに、緒方靖夫さん(日本共産党副委員長・党国際委員会責任者)が講演。緒方さんの話をまとめて掲載します。 編集部まとめ(編集:蛯原京子 写真:柏井敏喜)
