日米地位協定の改定を!!

主権放棄の日本

知念 和子 さん
ちねん・かずこ

「米軍への国内法の適用を求める会」代表。沖縄那覇市生まれ。18歳まで沖縄でくらし、その後大学進学のため名古屋に。保育士として働く。「命どう宝あいち」会員

アメリカ統治下とかわらない沖縄

私は、沖縄県那覇市で生まれ育ちました。対馬丸事件で犠牲になった人たちのことや小学校4年生の時に宮森小学校にジェット機が落ちたことなど小さいときからの記憶とともに、衝撃的だったのは、国場君れき殺事件です。
 1963年、私が中学生の時、沖縄がまだアメリカの統治下の時でした。那覇市で中学一年生の国場君が青信号で横断歩道を渡っていて米兵の運転する大型トラックにひかれて亡くなった事件です。米兵は軍法会議にかけられましたが無罪の判決が出ました。米兵の「太陽がまぶしく、信号がよく見えなかった」という主張や公務中という理由で無罪になったのです。私は「どうして人をひき殺して無罪なのか」と思いました。
 その後、1972年に沖縄が日本政府の統治下にはいると、沖縄にも日米軍事同盟にも付随する日米地位協定が適用されました。アメリカの統治下にあった時と変わらない状態が続いています。いまも沖縄では米兵による事件や事故はたくさんおこっています。犯人が分かっても日米地位協定によって沖縄県警は直接の手出しができません。
 2004年8月13日、沖縄国際大学の敷地内に米軍のヘリコブターが墜落しました。
 米軍は事故現場をすぐに封鎖し、日本の警察も消防も行政や大学の関係者も一切立ち入ることができませんでした。日米地位協定の「合意議事録」に米軍の財産に対する捜査権が日本側にないと記されているからです。

軽んじられている沖縄の人権

1995年に米兵による少女暴行事件をはじめ、現在も沖縄では米兵による性暴力事件が後を絶えません。昨年の12月にも少女が米兵に拉致をされ性暴力をうけました。沖縄県に報告があったのは事件から半年後の今年6月です。6月16日の沖縄県議選で自民党が不利になると隠ぺいしてきたわけです。
 米軍も政府も謝罪をしていません。沖縄の人たちの人権がどれだけ軽んじられているか。 
 沖縄には米軍の嘉手納基地は3700Mの滑走路が2本あり、深夜・早朝もかまわず、米軍機が飛び回っています。騒音でテレビは聞こえない、会話もできない。耳をつんざく音です。もう住めないと転居していく住民もいますが、その土地は防衛省に売られるようです。嘉手納基地の爆音裁判、第一訴訟1981年、第二次訴訟は1999年、原告の人数は、2022年第四次訴訟で3万5566人に達しました。裁判は現在も続いています。
 普天間基地のすぐ近くの普天間第二小学校の上空を戦闘機が飛ぶ、ひょっとして落ちるかもしれないとシェルターに避難するそうです。運動場での遊びが中断されてしまう、そんな危険な日常が続いているのです。
 
沖縄だけの問題ではない
 
 日米地位協定は沖縄だけの問題ではありません。名古屋港には米軍の艦船が入港していますし、小牧空港にはオスプレイが飛来してきています。現在の日米地位協定のもとでは、日本全国どこでも起こりえることです。黙っていたら、もっと悪い方へ引きずり込まれるだけです。みんなで声を上げ続けていかなければなりません。
 9月22日、沖縄県は那覇市内で日米地位協定に関するシンポジウムを開き、他国の地位協定や米軍基地の運用状況について玉城デニー知事が調査結果を報告しました。調査した国々が自国の主権をしっかりと行使していることが明らかにされました。玉城デニー知事は「日本ではまったく主権を放棄しているかのような状況」だと批判しました。本当にそう思います。
 北大西洋条約機構(NATO)加盟国のドイツ、イタリア、ベルギー、イギリス、日本と同じ太平洋地域のフィリピン、オーストラリアでは国内法が米軍に「原則適用」されています。日米地位協定は、成立以来ほとんど変わっていません。日本政府の姿勢の問題です。沖縄県がこれだけやっているのに、日本政府は何やってんだと思います。

名古屋市議会 2月議会へむけて

 全国知事会が改定を求めた2つの決議を9道県216市町の各議会が「改定を求める意見書」を採択しています。
「米軍への国内法の適用を求める会」では、「日米地位協定の実態を知らない多くの市民にその問題性を伝えたい」と議論を重ね2022年には名古屋市議会へ4936筆の署名を提出しました。各会派への働きかけもおこないました。この時は、日本共産党が紹介議員となりました。しかし、2023年4月に議員の任期満了として「結論をえることなく審議未了」という結果でした。結果は残念でしたが、各会派周りをしたときに保守系の重鎮議員が「米軍にも国内法をまもらせることは、あたりまえ」と述べていましたが、全国知事会の提言の重みも痛感しました。
この運動のなかで日米地位協定について知ってもらい、積み上げていくことがとても大事だと思います。現役時代は保育士で忙しく飛び回っていました。定年間近になって沖縄に関われるようになりました。原点は沖縄での体験です。大軍拡路線をひた走る政治を止めていくための一歩にもしていきたい。来年二月議会に向けて取り組みます。ぜひ、力をかしてください。

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