従来の保険証発行の再開を!マイナ保険証登録解除を!

マイナ保険証なくても大丈夫

荻野 高敏 さん
おぎの・たかとし 

愛知県保険医協会理事長
1950年中村区生まれ。
1975年名古屋市立大学医学部卒業。
1990年ニコニコこどもクリニック開業。
小児科専門医、医療法人ネオキッズ理事長、ニコニコこどもクリニック医師

マイナ保険証とは 

 マイナ保険証はマイナンバーカードに保険証機能を持たせたものです。マイナンバーカードの有効期限は大人の場合「10年」ですが、マイナ保険証は有効期限が「5年」となっています。
マイナ保険証の導入は、マイナンバーカードを全国民に持たせたい政府の思惑から始まっています。政府はマイナンバーカードをつくる際に国民からの反発を避けるためにマイナンバーカードの取得を「任意」としました。ところがその結果、マイナポイントを付けるなど様々な策を講じてもマイナンバーカードの取得は進みませんでした。そこで政府が目を付けたのがマイナンバーカードと保険証の一体化です。
 愛知県保険医協会は医療のデジタル化自体を反対しているわけではありません。しかし、今回のマイナ保険証への一本化はあまりにも強引に短期間に進めてしまったために、様々なトラブルが起きています。少なくとも現時点で、従来の保険証をなくしてしまうことはすべきではありません。政府は昨年12月2日以降、従来の保険証の新規発行を停止しましたが、即刻再開すべきです。

トラブル続出、重大な事例も

 愛知県保険医協会では、この間、会員の医療機関に数回にわたってアンケートを行いました。昨年夏のアンケート結果、7割の医療機関でトラブルが起こっていました。内容は、資格情報が無効、該当の被保険者番号がない、名前や漢字の間違い、●で表示され、カードリーダーの接続不良、認証エラー、マイナ保険証の有効期限切れ、他人の情報が紐づけされていた、負担割合の齟齬などです。
 一番最近に行ったアンケートでも、マイナ保険証によるトラブルが続出していることが明らかになっています。トラブルは様々ですが、窓口負担割合が間違っていたり、氏名が正しく表示されなかったり、医療機関の受診に大きな支障があるものが多数起きています。氏名が正しく表示されないということが一番多いです。一番よく例えられるのが「さいとう」の漢字です。読み取れないと「●藤さん」と表示されます。資格情報なし、名前や住所で「●」、カードリーダーがエラーを起こすといったトラブルが頻発しています。カードリーダーがエラーを起こせば受付事務がストップしてしまいます。
 重大な事故や命に関わる問題が起こっていると聞いたことがあります。カードリーダーで資格確認ができなかったために、10割負担は払えなくて、その日の受診をあきらめて帰宅しました。その後、重篤な病気が分かった例があるそうです。

マイナ保険証の期限切れも

 なお、最近はマイナ保険証の有効期限切れの事例も増えてきています。マイナ保険証は5年に一回更新しなければならないのですが、患者さん本人が知らないうちに5年を過ぎてしまっており、保険証としてつかえない事例です。これまでの保険証は、基本的に有効期限が過ぎた場合には自動的に新しい保険証が送られてきました。しかし、マイナ保険証は自分で更新手続きを行わなければなりません。運転免許証は期限が書いてあるのですがマイナ保険証は期限が書かれていません。今年2750万人が期限切れになります。期限切れと分かった時点でその日の医療費は全額払って、区役所へ行って更新手続きなどしなければなりません。
 この更新手続きがとても難しいのです。まず本人が区役所に行かなければなりません。体の不自由な人、一人暮らしの高齢者、認知症の方には大変なことです。こうした人たちこそ、最も医療を必要とする方です。国民皆保険制度がこういうところから崩されていきます。
 さらに医療機関の窓口では、資格確認の方法が7通りもあり、とても苦労しています。

12月2日に保険証発行停止されたが
 
 従来の保険証の新規発行は昨年12月2日以降停止されましたが、現在みなさんの手元にある保険証は引き続き使うことができます。安心して利用してほしいと思います。
 なお保険証が利用できるのは市町村国保や後期高齢者の場合は今年7月末まで、その他の保険はそれぞれの有効期限が異なりますが最長で12月1日まで使うことができます。有効期限が切れた以降は、マイナ保険証を持っていない人は「資格確認書」が自動的に送られてきます。「資格確認書」は保険証とほとんど同じものですので、今までの保険証と同じように医療機関の窓口に提示することで利用できます。
 なお、マイナ保険証を持っている人には「資格確認書」は送られてきません。資格確認書が欲しいという方はマイナ保険証の登録解除を行う必要があります。1月、厚生労働省はマイナ保険証の利用率が昨年12月で25%だったこと、マイナ保険証の利用解除申請が4万五千件を超えたと発表しました。従来の保険証の代わりとなる資格確認書があればトラブルもなく、医療にかかれます。

従来の保険証発行の再開を!

 私たち保険医協会では、引き続き従来の保険証の発行を再開するよう政府に働きかけています。昨年の総選挙の際にNHKが行った調査では、当選した議員の5割以上が保険証の存続または廃止の延期が必要だと回答しました。この中には、マイナ保険証を推進してきた自民党や日本維新の会の議員なども含まれています。 昨年、総選挙後の国会では、立憲民主党が「保険証廃止延期法案」を国会に提出しました。この法案は時間切れで廃案になってしまいましたが、このような状況をみると、通常国会のなかで従来の保険証の発行を再開させる法案を成立させることは十分可能な状況だと思います。
 患者さんには、紙の保険証を使ってください、マイナ保険証の登録解除できる人はしてくださいと呼びかけています。
 そのためには、国民の声を大きく広げることが大切です。日本保守党の河村たかし議員も保険証廃止反対です。私たちも、引き続き、幅広い国会議員に働きかけて、保険証廃止の撤回を勝ち取りたいです。

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