【20.09.10】北川 善英さん(横浜国立大学名誉教授・愛知淑徳大学非常勤講師)

みんなはどう思う?――若者の意識構造と学校教育

 最近の若者の意識構造の特色について、保守化(現状維持)、社会的・政治的問題への無関心、批判への嫌悪感(批判=悪口)が指摘されることが多い。また、情緒的、閉鎖的・小集団的、刹那(快楽)的、自己中心的といった傾向が指摘されることもある。
 彼らの社会生活の大部分を占めてきたのは学校教育である。若者の意識構造の形成に、些細なようだが本質的な影響を与えていると考えられ点を取り上げたい。
 (1)“みんなはどう思う?”“先生は~と思う”という教員の発問・意見である。“思う”には、感覚的・情緒的な意味(感じる、想う)から論理的・理性的・知性的な意味(思考する、認識する、判断する)まて、多様なニュアンスが含まれる。自覚的に使い分けて指導できる教員は少ない。登場人物の“思い・想い”を忖度することを強調する国語教育や“空気を読む”ことにこだわる若者文化も、論理的・理性的・知性的な思考の育成を妨げている。
 (2)“みんなは?”という教員の問いかけである。英語圏(you)・仏語圏(vous)であれば、個々人に対する問いかけが根底にある(あなた・たち)。日本語の“みんな”には、全員(all)かつ共通(same)の答えというニュアンスが強く、個々人の自律や自主性というニュアンスが弱い。さらに、団結心や一体感を強調する日本の集団主義的な学校文化が、それを後ろ押ししている。
 憲法の基本的価値である“個人の尊重”を、“個人”の質的内容においても(1)、“個人”形成のあり方においても(2)、学校教育が、無意識のうちに一定の方向へ誘導する役割を果たしているのではないでしょうか。

★北川善英さんは2016年3月号インタビューに登場。「立憲主義を取り戻す!民主主義の実現へ」と語っていただきました。

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