【22.10.10】久保田貢さん (愛知県立大学教員)

政治は誰のために あるのか。 私たちが正さねばならない。

 地方に行くことが増えた。講演仕事のついでに戦争関連のモニュメント等を観に行くからだ。どこに行っても過疎地の衰退が激しい。国が第一次産業への支援を怠ってきたので、農林水産業で生業を続けてきた地域の人口減に歯止めがかからない。90年代末からの市町村合併はそれに拍車をかけた。さらに公共交通機関が本数を減らし、あるいは撤退していくので、暮らしにくくなり、余計に過疎が進むという悪循環となっている。
 数年前、長野県天龍村にある平岡ダムの中国人や連合国軍捕虜の慰霊碑を観に行くため、飯田線を使った。驚くことに普通列車は一日に10本しか走っていない。以前は一時間に一本以上はあったはず。これでは高校生の通学にも不便だろう。
 先日、ある町で列車に乗り遅れ、タクシーを使うと、運転手が聞き捨てならないことをいう。「二人くらいしか乗っていない電車をよく動かしてくれていると思いますよ」。思わず反論してしまった。「二人でも一人でも公共交通機関は交通弱者には必要なんです。国や自治体が支援してもっと本数を増やすべきです。」
 過疎地だけではない。最近は地方都市でも新型コロナ感染症による観光産業への打撃が大きい。先週、三年ぶりに松本に行った。お気に入りのお土産を買おうと駅ビルのコーナーに行くと、売り場は半分以下になっている。目当ての店は撤退していた。地元の人に聞くと、長野県全体、ホテルの休業や廃業も後を絶たないらしい。仕事をなくして、彼らの生活はどうなっているのか。
 折しも、国葬なるものがおこなわれ、警備の警察官が駅を闊歩していた。国は金の使い方を間違えている。政治は誰のためにあるのか。私たちが正さねばならない。

*久保田貢さんは、2020年3月号のインタビューに登場し「学習の力で改憲い立ち向かう‐戦争の記憶を風化させない」と語っていただきました。

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