古本宗充さん(名古屋大学教授・環境学研究科)
今年も防災の日を迎えた。東日本大震災と福島原発事故からすでに2年半が過ぎようとしている。当時の衝撃を今後も風化させない努力が必要だと考える。
最近は特に原発について考えるとき、暗然となることが多い。当初から、メルトダウンした燃料による地下汚染をどうするかは気がかりであったが、ここにきてますます問題が深刻になっている気がする。
短期間で貯蔵タンクから漏れが始まるなどは論外だが、陸側から流れ込む地下水が連続的に汚染され、それを際限なく汲み上げ貯蔵するということは、どう考えても破綻する。
汲み上げた汚染水から多くの放射性核種を分離できたとしても、三重水素(トリチウム)を分離しようとすればとてつもない努力が必要になる。水の体積は下げようがない。上流側で地下水をくみ上げれば、海側から海水がやってくる事になろう。周りを冷凍などして壁を作る計画もあるようであるが、底が抜けた構造で汚染水をくみ上げても、底側から地下水の滲入や汚染水が漏出する可能性が高いのではないか。冷却用に循環・注入している水を含めて定常状態に持ち込もうとしても、自然相手を考えると大変そうである。
こうした処理計画に、地下水の専門家・研究者がどのくらい協力を要請されて、実際に参加しているのであろうか。これまでの経過を見ていると、東京電力の当事者能力は十分とは思えない。
今のようなことを何年も続けることはあってはならない。研究者や専門家などの英知も結集して、早急に解決の展望を示してほしい。