【18.05.10】飯室勝彦(元東京・中日新聞論説委員・元中京大学教授)

知的退廃――この国はいったいどうなってしまったのか

 この国はいったいどうなってしまったのだろうか。
 政治家も、官僚も、証拠を目の前に突きつけられてもシラを切り続ける。教育に対する権力的介入に疑問も抱かない国会議員がいるかと思えば、国民の代表である議員に面と向かって「おまえは国民の敵だ」と罵詈雑言を浴びせる軍人も現れた。
 まるであの暗い時代の再来ではないか。
 いや、再来ではなく「継続」と言えよう。現に財務省は当初、セクハラ高級官僚を大臣ともども省ぐるみで守り、被害者を攻撃していた。昔ながらの意識そのものである。
 むろん当時とは状況が異なる。しかし、人事権を武器に官僚の恐怖心を煽って服従させ、国民に真実を隠し、証拠の偽造さえ平気でする現代日本の権力者は、東条英機の時代を想起させるではないか。そんな権力に媚びる“御用メディア”の存在も似ている。
 知的営為に対する敬意を欠く、というより知的なるものをそもそも理解できない、安倍晋三首相が率いる権力機構の構成者たち、知的退廃、というか知的劣化はとどまるところを知らない。安倍首相は、政治は知的な思考・経験の蓄積であり、憲法はその集大成であることがまったく分かっていない。
 ただし、そんな人物とその取り巻きに権力を与えてしまったのも、御用メディアを日本一の部数にしたのも有権者、国民だ。不用意に投げたブーメランがいま自分に向かって戻ってきているのである。
 そのことを肝に銘じて次の一票を投じたい。

*飯室勝彦さんは、2013年6月号インタビューに登場され、「自民党改憲案は、戦前への回帰―客観報道と新聞の使命とは」と語っていただきました。

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