【18.08.10】猪瀬俊雄(元裁判官)―本当の秩序、平和はいつくしみとまことに基礎を置く政治

 与えられたテーマについては、やはり平和です。学生時代から毎日曜日に与ってきたカトリック教会のミサの祈りの核心は、「この世界にキリストの平和をお与えください」という祈りであり、ミサの終りには、「行きましょう主の平和のうちに」と「主の平和を生き、そのための活動をしてきなさい」と送り出されるものです。
 ところで、平和とは何でしょう。「平和は秩序の静けさ」(トマス・アキナス)と定義され、「いつくしみとまことはいだき合う…正義は神の前を進み、平和はその足跡に従う」(旧約詩編85)との部分もミサでよく朗読される箇所です。つまり、いつくしみとまことに基礎を置く政治がなければ、本当の秩序、平和もないということでしょう。
 この数年、秘密保護法に始まり、最近のカジノ法に至るまで社会の法制度が次々に変えられ、人間の尊重、尊厳の基盤である正しい平和が失われ、さらに後戻りできなくなる状況が迫ってきています。専守防衛を踏み越えた戦争法、無意味な核の傘理論への固執、戦争になれば、最初の攻撃対象になる安保条約による米軍基地の島、生け贄とされてしまっている沖縄問題、森友・加計問題で露呈した政府・官僚組織の不正、腐敗体質、国会の審議機能不全、元々安全性の解決不能な原発政策、いつの間にか天照大神の子孫が支配する国に戻りつつあるような天皇制等々、どこに正しい秩序を追求する姿勢があるのでしょうか。取り返しのつかない社会状況に突入しそうな危機感に焦るこの頃です。

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