遺伝子破壊するゲノム編集に600兆円!?
昨年11月に中国の研究者が、夫がエイズ患者の夫婦の受精卵の遺伝子をゲノム編集で壊し、将来エイズに感染しにくい双子の女児を誕生させたという研究を公表して以来、ゲノム編集という言葉がマスコミを賑わしている。 ゲノム編集とは簡単に言えば、目的とする特定の遺伝子を破壊し、あるいはそこに必要な遺伝子を挿入する技術である。過去数年間にこの技術は飛躍的に発展し、新たな産業革命になるかもと言われている。特に期待が大きいのは農畜産物の品種改良と医療分野における応用である。国内でもゲノム編集で筋肉モリモリの豚や鯛が出来る。あるいは人間の腎臓や心臓を持つ豚を作り、提供者不足に悩む臓器移植に使う研究が行われている。
意図しない遺伝子も破壊してしまうオフターゲット等、技術的にはまだまだ未解決の問題が多くあるにもかかわらず、厚労省はゲノム編集で作った食品に関し、安全審査や表示の必要はなく、開発企業の届け出だけで済ませる意向である。これはアメリカの主張そのままである。背景には昨年6月15日に行われた内閣府の「統合イノベーション会議」前日の安倍首相の発言がある。首相は閣僚会議の席上「この技術(ゲノム編集)を成長戦略のど真ん中に位置付け、関係大臣はこれまでの発想にとらわれない大胆な政策を一丸となって迅速かつ確実に実行すべし」と発言した(エコノミスト:2019年1月22日号)。
内閣府によればゲノム編集は今後600兆円規模の市場になると期待されている。命を金になるか否かで判断する政治は一刻も早く止めさせなければ。