金城美幸さん(立命館大学生存学研究所客員研究員)

パレスチナ問題の根源にあるもの

 10月7日にハマースがイスラエル領内を襲撃し、民間人を含め約1400人を殺害した。多くの人はこれをテロと呼び恐怖したことだろう。
 同時に、イスラエルの報復攻撃に驚愕した人も多いだろう。220万人のガザ住民が食料・水・薬・電気等の供給を絶たれ人道危機に陥った。27日以降はネットも使えず、世界の目が届かない状況で地上侵攻が本格化した。30日現在8000人以上が亡くなり、約半数が子どもと言われる。
 この間の報道や停戦を求める声明には、この事態の発端はハマースの暴力だと非難する一方イスラエルの過剰報復は非難する、というものが多い。だが、少し立ち止まって考えてほしい。本当にハマースの行動が発端なのか?
 答えはノーである。彼らの行動の背景には、イスラエルによる16年間のガザ封鎖、56年間のパレスチナ占領、75年間のパレスチナ難民の帰還権の否定、そして100年に及ぶパレスチナの植民地化の歴史がある。この中でパレスチナ人は民族自決権を否定され、占領下で土地収奪、逮捕(人質化)、殺害、封鎖に遭ってきた。問題の根源はイスラエルの暴力である。しかし私たちはこの暴力を十分に批判してきただろうか?
 パレスチナ問題の歴史ぬきでハマースが発端だと非難するのは、植民地主義の暴力やそれに対する抵抗の意義への理解が不十分だからではないだろうか。あるいはイスラーム組織を暴力の信奉者と捉える差別的見方も働いてはいないか。パレスチナ人の非暴力も含めた様々な抵抗が弾圧されてきたことの延長に今がある。私たちはこれまでパレスチナ人の声を聞いてきたのか?ハマース批判の前に自問してほしい。

*金城美幸さんは、2019年9月号インタビューで「歴史を学び直す『未来に繰り返さない』記憶の形成を」と語っていただきました。

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