青木 陽子さん/作家/革新・愛知の会代表世話人

 SNSが広がり始めてから二十年余。誰もが自由に自分の意見を発信できて、権力に対して物申すのが簡単になった一方で、弱者や少数者への攻撃の道具にも使われる。
 誰かを特定しての誹謗や中傷が簡単にできてしまう。間違っている、許せない(と感じた)対象は徹底的に糾弾される。根拠は自身の感覚・感情に基づく「正義」。「キャンセルカルチャー」と言うらしい。
 トランプのように、一国の大統領が平気で差別発言をする時代。私たちは、以前なら怒ったり呆れたり恥じたりした事態に慣れてしまったのではないかと、ふと思う。嘘も差別も根拠のない中傷も、いつの間にか、ひとつのスタンス、ひとつの主張として受けとめているのではないか。
 嘘はいけない、人を差別してはいけない、はずなのに、それらが「ひとつの意見」としてまかり通っていることが怖い。

このページをシェア