【14.02.07】安倍政権の反立憲主義―飯室勝彦さん(元東京・中日新聞論説委員

 
 「保守反動」「右寄り」―安倍政権をこのような情緒的で意味内容の不明確な言葉で評するのは危険である。座標軸の据え方で評価が一変するおそれがあるからだ。
 改憲の策謀、特定秘密保護法のごり押し、名護市民の声を無視した軍事基地の新設強行、集団的自衛権行使の容認、教育に対する権力的介入の強化……安倍内閣が目指す一連の法制度改革や施策は、日本国憲法の価値観と明らかに矛盾する。したがって「反立憲主義」「反知性主義」の呼び名がふさわしい。
 立憲主義とは通常、憲法によって権力を制限することをいう。憲法には人類の経験と叡智の積み重ねが反映している。だからこそ現憲法の前文は「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と結ばれているのである。
 この憲法の持続性、安定性を守ってゆくことは日本における立憲主義の根本的課題だが、課題達成に向けた努力は残念ながら十分だったとは言えない。
 安倍政権はその隙を突き、積み重ねられた叡智を「戦後レジーム」と称して投げ捨て、平和、不戦の誓いを踏みにじろうとしている。国民は特定の価値観を押しつけられ、目や耳をふさがれたままとんでもないところへ連れていかれようとしている。
 権力にとって使い勝手の悪い憲法なら、その憲法は正しく機能しているのである。我々はそのことの重い意味を理解しなければならない。
 人類の叡智に基づく憲法を無視して暴走する政権の誕生を許したのは有権者である。だから、その暴走車を排除するのは国民、有権者の責任だ。この国のかたちはどうあるべきか、政治や社会はどうあらねばならないか―一人ひとりが主体的に熟慮すれば結論は明らかになる。

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